バイオマスとしてのキトサン、キチン

キチン質は地球上において植物性繊維セルロースに次いで年間生物生産量1000億トンに達する動物性繊維です。キチン質はセルロースと同じように生物により再生産されるので、枯渇することがない天然物質です。
カニやエビの殻が普通は捨てられるように、キチン質は非常に分解されにくい高分子物質です。タンパク質、炭酸カルシウムと結びついて非常に安定したかたちで存在しています。このタンパク質、カルシウムを除くと純粋なキチン質になります。キチン質を濃アルカリで高熱処理(脱アセチル化)するとキトサンになります。このときに一部キトサン化されないキチン質がわずかに残るのでキチン・キトサンとつなげて呼ばれます。
日本の農林水産省は1982年に、キチン質の研究を未使用生物資源バイオマス開発研究の対象に含めました。その後、農業、工業、医療、環境と広範囲に及ぶキチン、キトサンの有用性が明らかになり、その成果がより具体的な利用法へ向けて進んで行きました。水の浄化、放射性物質に除去、無農薬肥料、化粧品、工業素材、人工皮膚、コンタクトレンズ素材、人工血管など実用化されたものもあります。特に注目されているのは健康食品、機能性食品としての利用です。